近年、日本の人手不足解消の切り札として注目されている特定技能制度。中でもタイからの特定技能労働者の受け入れは、二国間の協力覚書に基づく特別な手続きが必要となります。
今回は、タイ人労働者を特定技能で雇用する際の雇用契約書の承認プロセスについて、行政書士の視点から詳しく解説していきます。
タイ特定技能における二国間の協力覚書の重要性
二国間協力覚書とは
二国間の協力覚書(MOC:Memorandum of Cooperation)は、日本とタイ政府間で締結された特定技能制度の適正な運用を目的とした国際的な合意文書です。
この覚書により、両国は特定技能労働者の送出し・受入れについて、透明性の確保と適正な手続きの実施を約束しています。特に、タイから日本への特定技能労働者の送出しについては、タイ政府による事前承認制度が導入されています。
二国間協力覚書の目的と意義
二国間協力覚書の主な目的は以下の通りです:
労働者保護の強化 :
不適切な仲介業者の介入を防ぎ、労働者が安全で適正な条件で就労できる環境を整備することが最優先事項となっています。
手続きの透明性確保:
送出し・受入れプロセスを明確化し、関係者全員が同じ基準で手続きを進められるよう、統一的な枠組みを提供しています。
両国の信頼関係構築:
政府レベルでの連携により、制度の安定的な運用と継続的な改善を図っています。
日本とタイの二国間協定の概要
日本とタイの二国間協力覚書は、2019年に署名され、特定技能制度の円滑な運用のための具体的な枠組みを定めています。
この協定では、タイ政府の認定機関による事前審査、雇用契約書の承認、労働者の出国前オリエンテーションなどが義務付けられています。また、受入れ機関(日本の雇用主)側も、タイ政府が定める基準を満たした雇用契約書の作成が求められます。
特定技能制度と雇用契約書の関係
雇用契約書の役割と必要性
特定技能制度における雇用契約書は、単なる労働条件の合意書ではありません。この契約書は、特定技能外国人の在留資格申請の際の重要な添付書類となり、出入国在留管理庁による審査の対象となります。
特にタイ人労働者の場合、日本の出入国在留管理庁による審査に加えて、タイ政府による事前承認が必要となるため、両国の基準を満たした契約書の作成が不可欠です。
タイ人を特定技能で雇用するための準備
雇用契約書の作成手順
タイ人特定技能労働者との雇用契約書作成は、以下の段階を経て進められます:
要件の確認 :
出入国在留管理庁が定める特定技能の基準に加え、タイ政府が要求する追加事項を確認します。
書類の作成 :
日本語とタイ語が記載された雇用契約書を作成し、内容の整合性を確保します。
※タイ王国大使館労働担当官事務所ホームページ参照
https://japan.mol.go.th/en/download/ssw-doc-2
【書類の構成と内容】
雇用契約書には以下の項目が必須となります:
基本情報
- 労働者の氏名、国籍、生年月日
- 雇用主の名称、住所、代表者名
- 契約期間
労働条件
- 業務内容(特定技能の対象業務に限定)
- 就業場所
- 労働時間・休憩時間・休日
- 賃金(日本人と同等額以上)
- 社会保険の加入
認証が必要な書類
タイ政府の承認を得るためには、以下の書類の準備が必要です:
- 雇用契約書・雇用条件書(日本語版・タイ語版)
- 雇用契約書の付録
- 特定技能所属機関の登記簿謄本
- 登録支援機関許可証明書の写し
- 在留資格認定証明書(指南書含む)の写し
- パスポートの写し
- 在留カードの写し
- 日本語合格証明書の写し
- 特定技能の技能合格証明書の写し
など
※注意点
『日本在住の労働者』『タイにいる労働者』『国外紹介事業所の斡旋による労働者』により手続きや書類が異なります。
雇用契約書の承認プロセス
承認手続きのステップ
タイ人特定技能労働者の雇用契約書承認は、以下の流れで進められます:
ステップ1:書類準備
雇用契約書をはじめとする必要書類を整備し、タイ語翻訳を完了させます。
ステップ2:タイ政府への申請
タイ労働担当官事務所を通じて、雇用契約書等の承認申請を行います。
ステップ3:審査・承認
書類審査が実施され、承認されれば原本に認証印が押された書類等が返送されます。
ステップ4:在留資格申請
承認された書類を添付して、日本の出入国在留管理庁に在留資格認定証明書交付申請を行います。
タイ大使館での手続き(労働者がタイに在住している場合)
認証された雇用契約書類等、在留資格認定証明書を受け取った後、労働者本人がタイ国内の在タイ日本大使館領事部でビザ申請を行います。この際、以下の書類が必要となります:
- パスポート
- 在留資格認定証明書
- タイ政府発行の承認された書類
- その他領事館が指定する書類
まとめ
タイ特定技能の雇用に向けてのポイント
タイ人特定技能労働者の雇用を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です:
事前準備の徹底
二国間協力覚書の要件を正確に理解し、両国の法令に適合した書類作成を行うことが成功の鍵となります。
専門家との連携
複雑な手続きを確実に進めるため、特定技能制度に精通した行政書士や社会保険労務士との連携が不可欠です。
継続的な支援体制
雇用契約の締結は始まりに過ぎません。労働者が安心して働き続けられる環境づくりが、長期的な雇用関係の構築につながります。
参考リンクとリソース
出入国在留管理庁
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri06_00112.html
駐日タイ王国大使館労働担当官事務所
https://japan.mol.go.th/en/
厚生労働省
- 労働基準法の詳細
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042451.html - 社会保険制度の説明
https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/koujirei/jugyouin
JITCO(公益財団法人 国際人材協力機構)
https://www.jitco.or.jp/ja/news/article/5553
タイ人特定技能労働者の雇用は、適切な手続きを踏むことで、企業の人手不足解消と労働者の安定した就労の両立が可能になります。不明な点がございましたら、専門家にご相談いただくことをお勧めします。


